配偶者ビザの更新‐夫婦の寝室は別でも良いか?
配偶者ビザの取得・更新の際,夫婦の寝室は一緒にしておく必要があるのでしょうか。先日,6月21日に東京地方裁判所でその点の判断がされましたので,配偶者ビザの条件と一緒にご紹介したいと思います。
配偶者ビザの条件-婚姻の実体
配偶者ビザの取得や更新の際には,結婚した間の夫婦の間に「婚姻の実体」が必要とされています。この婚姻の実体とは,簡単にいえばお互いに夫婦として生活を続ける気持ちがあるのかどうかということです。
夫婦として生活を続ける気持ちがあるかどうかは,お互いの心の話となるため,説明したり証明することは困難です。そこで,それまでの行動や交流の内容などから判断されることになります。
婚姻の実体の判断条件とは
それでは,どのような行動や交流内容から婚姻の実体が判断されるのでしょうか。一般的には,知り合った経緯,交際のきっかけ,交際中の交流頻度,結婚の経緯,現在の生活状況,将来の家族計画といった事情から判断されます。
配偶者ビザの更新の際には,特に現在の生活状況やこれからの家族計画を中心に,婚姻の実体が続いているかどうかが審査されます。
夫婦の寝室は一緒でなければならないのか
現在の生活状況の重要な要素として,夫婦が同居して生活していることが前提となります。そして,同居して生活していることの内訳として,夫婦の寝室が同じか否かという点について,東京地方裁判所が判断をだしました。
事件の当事者は元々配偶者ビザで日本に滞在していましたが,偽装結婚の疑いがあるとして在留資格を取り消されました。そして,退去強制処分(強制送還)が命じられたため,それが不服として裁判していました。
その裁判の中で,入国管理局は,夫婦で寝室が異なる点などを根拠として婚姻の実体がないと主張していました。しかし,東京地方裁判所は「夫婦でも寝室を分けることはある」として婚姻の実体を認めて,退去強制処分を取り消す判決をしました。
実際の主張では,入国管理局は寝室が別だということだけで婚姻の実体がないとしていたわけではありません。しかし,裁判の当事者は既に65歳を超える高齢の夫婦であり,民間業者の調査では65歳以上の夫婦の35%は寝室を分けているというデータもありあます。そのため,この東京地裁の判断は,しっかりと実態を考慮した良い判決だと思います。