永住権・永住ビザ申請と公的義務(税金・年金・保険 等)の履行
永住権・永住ビザの申請について、法務省が発表している「永住許可に関するガイドライン」の中に『納税義務等の公的義務を履行していること。』というのが判断要素の一つとして定められています。
この公的義務とは、ざっくり言えば法令上で国や地方公共団体(都道府県や市など)に対して負っている義務のことをいいます。では、永住権申請の際にどのような公的義務が問題となるのでしょうか。以下、概要をお伝えします。
納税の義務
永住申請の場面での納税義務で基本的に問題となるのは、所得税と住民税くらいです。日本には、自動車税や固定資産税など実に様々な税金がありますが、永住申請の場面では、所得税と住民税以外は余り重要視されていません。とくに、住民税は重要です。
永住申請の際に必須書類となっている納税証明書は、住民税をきちんと期日通り支払っているか否かが記載されています。就労ビザから永住申請する場合は、3年度分きちんと住民税を支払ったかどうかが審査されます。自分で住民税を支払っている方は、期日通りにきちんと支払っているかどうかも審査対象となります。
もし、納税証明書から遅れて支払った旨が読み取ることができた場合は不利な事情となるため注意してください。
個人事業主の方は、所得税も自ら支払うことになるため、しっかり確定申告して、所得税も支払ってください。ただし、永住申請の際に、所得税の納税証明書まで提出することは、現時点では求められていません。
健康保険料の納付義務
会社などで働いている方で、会社の社会保険に加入している方は、毎月の給料から健康保険料が引かれていると思いますので気にする必要はありません。社会保険に加入していない方や、自営業の方などは、基本的に国民健康保険に加入する必要があり、収入に応じた保険料を納付する必要があります。
最近は、国民健康保険の納付について厳しく審査される場合もありますので、納付していない方や、遅れて支払ったことがある方は、不許可になるリスクが高くなります。
きちんと保険料を支払っているか否かは、市区町村が発行する納付証明書で確認することができます。
年金保険料の納付義務
以前、年金の未納問題がニュースになったこともあり、年金は支払わなくても問題ないと考えている方もいるようですが、それは間違いです。20歳以上60歳未満で日本に住所がある方は、全員なんらかの年金制度へ加入する必要があります。そして、法律上、保険料の納付は義務となっています。そのため、外国人でも年金保険料の納付義務があります。
過去に、年金の未納期間があったとしても、現在は過去5年以内であれば年金を支払うことができます(免除手続きを行っていた場合は最長10年まで)。そして、永住申請の際にも、過去5年間の年金の支払い状況について確認されることが増えてきました。
そのため、年金の支払いについても、現在では永住申請の際に確認すべき公的義務の一種としてきちんと支払うことが大切です。
公的義務に関する補足
上記の義務は、法律上支払う義務がある方のみが検討されます。例えば、配偶者に扶養される家族などで収入がない場合や、収入があっても100万円未満といった金額が少ない場合は、そもそも住民税の納税義務はかかりません。
そのため、納税していないことが問題になるのではなく、納税義務があるにもかかわらず納税していないことが問題になるにすぎません。
時々、今まで税金をきちんと支払って日本に貢献してきたから当然永住は取れますよね?と質問される方がいますが、現在の日本の法律上、課税対象になれば納税することは当然のことであり、支払うべき税金を支払ってやっとスタートラインに立てるだけです。そのため、しっかりと税金を払ったからといって、永住権が取れるものではないので注意が必要です。